たっかーずめもりある

とあるおっさんの備忘録

インドシナ旅行記 第5話

宿にいた僕は何をするか非常に悩んでいた。夜の香港はそれはそれは妖しさ満点の街なのだが昼の香港はただのデカい梅田である。そして僕はショッピングとかディズニーとかがこの世で最も似合わない人間である。
あ^〜どぉしよぉ^〜、と悩む僕はふと財布を見た。


財布大先生は黙して語らず。


あー金があれば豪遊できるのになぁ。金降ってこないかなぁ。


財布大先生はただ沈黙を貫くのみ。


全く使えない大先生に愛想を尽かした僕の自らの頭をフル回転……そこでピコンと閃いた。
小学校時代は天才と言われ、中高時代はマジキチと言われ、大学では落単芸人と言われたこの僕のアメイジングな脳は閃いた。

金がないなら増やせばええやん

究極の真理。
というわけで金を稼ごう。
カジノに行こう。
Let's go to Macau!!
なおGoogle先生いわく、マカオでは20歳以下はカジノ禁止らしかったが、どうせ中国やしその辺ガバガバに違いない。

香港の九龍にある船着場から1時間程ほど高速船に揺られてマカオへ。同地は外国扱いにつきパスポートが必須。マカオスタンプキター!と思ったが残念ながら渡されるのはレシート的な紙。味気ないなぁ。
物凄いスピードの高速船で少々ビビってしまい、なんとか気を紛らわそうと隣の席の白人にHello!と言ったみるが見事にスルー。このホワイトゴリラはコミュニケーションという言葉を知らないのか。

↑億万長者への第一歩

マカオに到着した僕であるが、この段階ではまだビンボー。周りの観光客が次々とバスやタクシーに乗り込む中をとぼとぼと炎天下のアスファルトの上を歩く。
耐えろ。今は耐える時や。数時間後にはリムジンや。

↑???「マカオはウチのとこやで」

黙々と歩き続けると一際熱気を放つ空間が。そこで見つけるは
ゴールデンドラゴンホテル
やったら強そうである。マカオの高級ホテルには基本的にカジノが併設されているので、はいキマシタワー!とカジノに意気揚々入った…いや入ろうとした。
すると立ち塞がるはインド系の黒いやたらゴツいゴリラのごとき大男、てかゴリラ。ホテルの名前も強けりゃ警備員も強いのか。
ゴリラは言う。
パスポート見せろやオラ。
この時点で観念する僕、パスポートを見せると案の定NOooooooo!!!!!の雄叫びが。


僕「Pleaseeeeee!!!!!!
ゴ「Nooooooooo!!!!!!


こうして僕のカジノ計画は消滅。金稼ぐどころかこの時点で高速船代5000円強のマイナスである。なんてこったい。他のカジノ行くという手もあったが、どうやら年齢詐称は下手するとブタ箱行きらしく、そもそも別の場所であのゴリラ警備員の亜種に遭遇した時、奴らから発せられるあのプレッシャーに耐えられる自信がない。

マカオを代表するカジノ「ホテル=リスボア」


僕は途方に暮れた。マカオでカジノする気満々でいたので帰りの船の便は夜中である。それまで10時間もどうしろと言うのか。そもそもマカオにはカジノ以外の観光地は少ないのである。(金があればF1とかあった)

セドナ広場。マカオを代表する観光地。

セドナ広場周辺をしばらくグルグルしていたが、目を瞑ってでもマクドがどこにあるのかすら把握できるようになり流石に飽きた。そこでマカオは非常に面積が小さいと聞いていたため徒歩で歩き回ることにしたのだが。
暑い。クソ暑い。
なんだこの暑さは。
ヒートアイランド真っ盛りではないか。
そもそもいくら小さいとは言っても1つの独立した国(モドキ)やぞ。歩けるわけないやろ、と内なる声がつっこんでくる。うるせえ。

あぁ、タクシーとかバス使いたい。
だがそれは無理な相談である。これ以上マイナス収支にしてはいけない。どうもマカオは金がないと来ては行けないようだ。だが、マカオの教会群は日本と違い本場カトリックポルトガルが建設したこともあって非常に壮麗で綺麗だった。

↑某教会にて祈りを捧げるシスター。


セントポール大聖堂跡。こちらも有名な所だがぶっちゃけただの廃墟である。

少し真面目な話をするとこのマカオは香港以上に格差の激しさを感じた。超高級ホテルとボロボロの半スラム団地が隣り合っているのは異様な光景であった。そして観光客は誰もスラム街のことを口にしないどころか見向きもしない。リゾート地としてのマカオを求めてきた人々にとってはマカオ格差社会は初めから蚊帳の外、無意識の内に視界から除外しているのではないか。だからこそネット上ではマカオの光の部分しか見ないのだろう。そういう意味では街歩きは実際のマカオを知れて良い経験であったのだろう。暑いけど。迷子になったけど。

マカオの格差を物語る

酷暑の中しばらく歩き、遠目にマカオタワーなる物件を発見。麓まで辿り着き少しでも天に近付こうとするも、もちろんカジノ計画が破綻した今の僕にはそれこそ入場料は天の存在。展望室からは地べたに這いつくばる僕を嘲笑うブルジョワ共の姿が見えた、ような気がした。

マカオタワー。いつか破壊しなければ。

あーだこーだしているうちに夜になったのでマカオの夜景を観に行くことに。香港を文明の夜景とするならマカオは狂乱の夜景である。なお当然ぼっちである。夜景を見ながらチューするのは万国共通なのか、僕は般若の顔になりながら無言で写真を撮ると惨めに退散した。

↑金が生まれ消えていく待。

なんとか時間潰しを終え同じく高速船(ターボジェットなるイカした名前だ)に乗り香港への帰途へ。
高速船の名は伊達ではなく超速い。そして超揺れる。周りの現地人は何食わぬ顔でポテチ食ってるがよくひっくり返さないものだ。元々船に弱い僕には泣きっ面に蜂。早々にトイレに駆け込み…揺れるので辿り着けず。

瀕死の身体に栄養補給を。
今日の晩御飯は昨日に続いてラーメン屋である。注文したのはずばり
HAKATA-RAMEN!!!
出てきたのはどう見ても博多系ではないしなぜか蟹モドキ?カニカマ?らしき物体が鎮座しているが確かにラーメンであった。昨日のモドキとは雲泥の差である。

↑HAKATA-RAMEN

僕は自然と涙が出てきた。
あぁこの味、この香り、この食感、まさにラーメンである。
日本にいた時なら並みレベルと批評するラーメンだったが今の僕にはミシュランすら超える神の逸品に思えた。砂漠遭難者が水を見つけた時の気持ちがようやく分かった。僕は万感の想いを込めて「こ"ち"そ"う"さ"ま"ぁ"ぁ"ぁ"!!!」
と叫んで宿にルンルンと帰還したのだった。



おまけ

↑絶対ブルジョワ倒す砲